今回、当研究所の広島支部より程近い、尾道造船株式会社様の第538番船の進水式を見学する機会に恵まれた。
そのレポートをここに記す。
造船所に入ると、なんというか、そこらじゅうにあるものの大きさに圧倒される。人間が本当に小さく感じられる。
四万七千トンのタンカーが、輪切りになったような、建造中の光景。
ちなみに、図1左のタンカーは次に建造される第539番船であり、10月27日に進水式が予定されている。
確かに30万トンの超大型タンカーもあるが、4万7千トンといえども、日常の感覚からかけ離れたものすごい大きさに感じられ、圧倒される。全長182.5mのタンカーだが、まるで壁のようにそびえる。
そして、タンカーというとなんか平べったいイメージがあるが、喫水線の下がこんなに深かったとは。できたてのほやほやの、ピカピカの状態なのも、船首が見えるのも新鮮だ。
船名が紅白の垂れ幕で隠されているのも、いかにも進水前という感じを受ける。
新造船の横に仮設の台が設けられ、新造船へ支綱が伸びる。
轟音とともに海へ向かって進む180m余りの巨体は圧巻であった。
また、つい先ほどまで目の前に圧倒的な存在感を示していた船が、ほんのわずかな間にそこにいなくなっているというのは非常に感慨深いものがある。
宇宙ロケットの打ち上げも神々しいまでの美しさがあり、空になったランチャーを見ると、同じような感慨におそわれるが、進水式もまた感動的なものである。
船が海に入っていくところは、よく見えなかったが(船主や来賓、関係者が前の方なのは当然だから)、船尾側の見学場所もあるようなので次回(10月27日)は船尾側で見学したい。
ところで、散水しているのは摩擦熱対策であろうか。あれだけ重量がある巨体が海まで200〜300mも滑り落ちていくのだから、摩擦熱も相当なものだろう。また、摩擦係数μを減らすのにも役立っているかもしれない。進水直後、塗装のにおいがかなりしたが、船底部の塗装が熱でにおいを発生させたのだろうか。
また、進水式の時間が今回は14:40であったが、次回は10:20からとのこと。潮の満ち干にあわせて、満潮のときを狙っているのかもしれない。確かに海を見るといつもより潮が高い気がした。
今回、特に命名はされず、船名にかけられた幕もついたままだったが、この船は、MAERSK MAYA号とのこと。本来は船主の夫人か娘が命名するのではないだろうか。