SLやまぐち号は出発時間が早い。10:36分である。SLやまぐちDC号も、機関車と客車が違うだけで基本的に同じ時間帯なので、同様のことがいえる。
10時過ぎているのでたいして早くないと思う方もいるかもしれないが、東京の人は始発の新幹線でも間に合わない(名古屋以西であればなんとかなるようだ)。寝台特急富士/はやぶさであれば間に合うので、富士/はやぶさの寝台券を見せると、通常の一日前(一ヶ月+1日前)に切符が取れるという特例があるくらいだ。
今回、うちは18きっぷの消化をかねていたので、新幹線は当然使えない。尾道からであっても、各駅停車を利用すると、新山口に10:36に到達することは不可能である。そのため、前日に下関、門司エリアまで行き(別レポートにて乗車記公開予定)、新山口で前泊。満を持して10:36に乗車というパターンを採用した。
また、先に機関車が違うと述べたように、SLやまぐちDC号は基本的に金曜日運転で機関車はC56であり、通常のボックス席の客車。SLやまぐち号は土、日、祝日運転で、C57であり、やまぐち号専用の6両編成のレトロ調客車という違いがある。このために両方乗車するにはやまぐちDC号に金曜日に乗車し、翌日やまぐち号に乗る必要がある。そこで、津和野でも一泊することとし、新山口での一泊とあわせ2泊もの旅行となった。一方、そうなると2日目の乗車券は新山口から津和野までの1110円だけ(+指定券510円)となり、18きっぷ一回分を下回るので、2日目は18きっぷを使用せずに別払いで新山口から津和野までの乗車券を購入することとした。
SLやまぐち号の客車については、号車により展望車、欧風、大正風、昭和風などと分かれている。個人的にはちょっと豪華な感じのする欧風や、古きよき時代(鉄道が庶民から縁遠く高級感のあった)大正時代風の客車にしたかったが、鉄道が庶民の手の届くものになり(それに応じてグレードの落ちた)昭和時代風の3号車しか空きがなかった。昭和風などといわれると、単に古臭いだけの客車ではないかと危惧していたが、それについては実際に乗車してみたところ後述するように杞憂に終わった。
図1.SLやまぐちDC号指定券
図2.SLやまぐち号指定券
前項にて述べたように、前泊を行い、ホテルのサービスの朝食(おにぎり+トン汁)を満喫してゆっくりとホテルを出た。4140円で、部屋も清潔で朝食まで食べられるのだから、かなりお値ごろ感がある。21時までのチェックインならば、前夜にカレーのサービスもあるという。次回も使いたい。
チェックアウトし、駅の構内で乗車中の飲み物や駅弁を購入した。ちなみに駅弁はせっかくだからSL弁当にした。一食分にしては少々値が張るのが難点だが、今回はやまぐち号初乗車であり、雰囲気を楽しむという意味でよいだろう。
新山口駅の改札を通ると、山陽路のヒーローたち〜博物館がやってきた〜という、梅小路蒸気機関車館と交通科学博物館の移動展示をやっていた。発車時刻までまだ余裕があるので、時間まで、そこのパネルやHOゲージの展示を見てすごした。
図4.山陽路のヒーローたち〜博物館がやってきた〜展示ブース(クリックで拡大)
出発ホームに向かうと、いきなりバックで入線してくるところだった。急いでカメラを構える。
いずれにしても、人が多すぎ、なおかつ近すぎるので隣のホームへ移動し、全体の写真を撮った。
新山口のホームは、腕木式の旧型の信号機が(使ってはいないものも)残されていたり、振り子時計があったり、運行表(?)の黒板があったり、旧字体の駅名票があったりと、古いものを集めてあり、発車を待ってる間も退屈しないようにできていた。
図6.腕木式信号機
図7.テンダー下のナンバープレート
ちなみに、客車内は、ごく普通の青いボックスシートであった。
やがて、発車時刻になり、長い汽笛の後、ゆっくりと動き出す。電車に慣れていると、機関車が何両もの客車を引っ張る客車列車の加速はいささかのんびり感じるが、それがまたいい。また、乗車したのが2号車(前から2,1号車の順になっている)で機関車に近いので窓に耳を近づけると、リズミカルなドラフト音が聞こえてくる。なお、機関車直後のデッキに行ってみたが、むしろ客車自体のディーゼル発電機の騒音で、かえって聞こえなかった(笑)
途中、いくつかの駅で(列車交換のため)長い停車時間があり、ミニ撮影会の様相を呈した。また、車内では検札の際に記念乗車証(ピンバッチ付)とスピードくじが配られ、くじで当たるとチョロQがもらえるとのこと。残念ながら私ははずれた(笑)
ほぼ2時間の列車の旅だが、外の景色を見たりしているうちに12時近くなった。ここで先に調達しておいた弁当を食べる。だが、津和野駅12:37の到着なので、それほど時間はない。ほかの乗客も津和野に到着してから食べるか、車内で食べるか、時間帯的に微妙なところだと思う。食べ終わったころにはもう到着であり、結構忙しかった(笑)
到着後、乗客たちが記念撮影のために機関車付近に集まるが、しばらくすると回送のために発車した。この後、客車ごとバックして一番駅舎よりのホームのない線路に客車を留置して、さらに機関車は単機で転車台に向かいピットで帰りの便に備えて整備(燃え殻を捨てたり、偏った石炭を寄せたり、給水したり、動輪を叩いて確認したり)。整備後、転車して駅の先の踏み切りあたりでバックして客車に連結。客車をホームのある線路に移動して発車準備という結構手間のかかる入れ替え作業が行われる。それも本線の列車をやりすごしながら。これだけ苦労するのだから、客車列車が廃れていくのも仕方ないかもしれない・・・。